突然終わるかもしれないブログ

確率や統計の内容について記事を書く予定です.

モーメント母関数の条件付き期待値

次の記事でKaratzasAndShreveのProblem3.2.28の証明をしたいと思いますが,そこで使う補題を示しておこうと思います.

主張
を確率空間とし, の部分σ加法族とする. また をほとんど確実に有界な 可測関数とし, を平均 0 分散 t の正規分布に従う と独立な確率変数とする.このとき

が成立する.つまり で条件付けると を定数と見なした のモーメント母関数になっている.

[証明]
まず が単関数のときを示す.

とする.ただし, とする.また

とおく.任意の に対して

よって

となる.次に がほとんど確実に有界な一般の確率変数のときに示す.このとき単関数の列

となるものが存在する.ここで

とすると,Vは可測である.さらに

であり,

である.よって条件付き期待値の優収束定理より

を得る.[証明終]


もっと簡単に示せそうな気もするんですが,とりあえず上のように愚直に示しました.あと細かい議論は抜きで条件付き期待値と可算和を交換しようとすると

途中で

であることを使いました.これでも期待値と和の交換の正当性が言えればいいと思います.

cross variation の一意性(つづきのつづき)

cross variation の一意性(つづき)

cross variationの一意性はやはり言えることを,Doob-Meyer分解の証明(分解の一意性のところ)をみて思いました.

[証明]

はどちらもnatural,increasingな過程の差で表されるから,任意の有界右連続マルチンゲール にたいして

ただし, (有界変動)とした.また で左極限はほとんど確実なpathで存在する(*).[0,t]の任意の分割

として, となるものを考える. は有界であったから,ルベーグの優収束定理を(2回)用いれば

ところが

なので

ここで とし の右連続な修正をとって考えれば(*)

よって  あとはpathの連続性からindistinguishabilityを除いてAと<X,Y>は等しい.[証明終]


(*)の詳細はKaratzas-Shereveを参照してください.結局naturalという性質から一意性は出てくることがわかりました.2乗可積分連続マルチンゲールのときのcross variationの一意性ではまた別の証明がされていますが,連続単調増加関数はnaturalなので,上の議論からも一意性は出てくる気がします.わざわざ別証を付けるのは局所化の動機づけなのか,もしくは二次変分の性質を使いたかったからなのか,それとも上の証明が違うかのどれかだと思いました.

cross variation の一意性(つづき)

cross variation の一意性 で書いた証明は間違っていることに気づきました.<X>+2A+<Y>がincreasing であることを言うときにcross variation の全変動を抑える不等式は,間違えでした.

とりあえず調べてみるとIkeda-Watanabe(Stochastic Differential Equations and Diffusion Processes)のp53に証明があったので読んでみたのですが(以下その証明),これで一意性がいえていないのではないかと思います..

証明

とし,M,Nの二次変分過程をそれぞれA,Bとする.このときXY-(A-B)はmartingaleになる.一意性はDoob-Meyer分解の一意性から従う.[証明終]

普通一意性を言うときはある上の条件を満たす過程Aがあって,実はA=<X,Y>ということを言わないといけないのではないかと思うのですが,上の証明でそれがいえているのかわからないです(というかいえていないのではないかと思います).もう少し考えてみて分かったらまた書こうと思います.

cross variation の一意性

主張

(2乗可積分マルチンゲールでかつ)とする.このとき がマルチンゲールとなり,しかも という分解を持つものはindistinguishabilityを除いて一意である.ただし

とする.


証明

をX,Yの二次変分過程とする. がマルチンゲールであるから,

もマルチンゲールである.Doob-Meyer分解の一意性(natural,increasingなので)より

実際 がincreasingであることは

より従う.

同様に

辺々引いて4で割れば

[証明終]


からしゅれの復習をしていてぱっと示せなかったので一応書き留めておくことにしました.連続だとさらに局所化のテクニックを使って連続なcross variationの一意性も示せます.この主張からcross variationの双線形性やシュワルツの不等式の類似物,cross variationの全変動を上から抑える不等式を得ることができ,Kunita-Watanabeの不等式などを得ることができるので,重要な主張だと思います.(Karatzas-Shreve参照)

pathが右(左)連続でadaptedならprogressively measurable

一度証明を書いておこうかと思います.

主張
を実数に値を取る,右(左)連続で -adapted な過程とする.このとき過程Xは発展的可測である.

[証明]
右連続の場合のみ示す.左連続の場合も同様. を以下のように定義する.

に各点収束する.実際 は右連続であるから任意の と任意の に対して,ある があって

nを十分大にとれば, となるので,各点収束する. は発展的可測であるから,各点収束先である も発展的可測である.



伊藤の公式は連続セミマルチンゲールの確率積分に対しての主張なので,発展的可測かどうか確かめる必要があるのですが,上の主張から問題ありませんでした.class DLの記事のときにもこの主張を確認したのですが,まだ馴染んでない気がしています.pathの片側連続性があれば,可測性には弱い仮定(adaptedだけ)仮定するだけで,発展的可測がでてくるのがしっくりきていない気がしています.

マルコフ過程で発展的可測であるが,強マルコフ過程でない例

からしゅれにも参照の本が挙げられていたけれど,ぐぐったら出てきたので紹介を.

The Strong Markov Property and Martingale Problems

この関数fを見つけてきたのはすごいと思いました.

可測写像が与えられたもとでの条件付き期待値

Definition

を確率空間,を可測空間とする. を可測写像 を実確率変数とし可積分とする.このとき


とすると, は上の符号付き測度となる.また (像測度) とすると, は に関して絶対連続となる.
よってRadon-Nykodim 導関数が存在し,それを と表す.これをY = y が与えられれたときのX の
条件付き期待値(conditional expectation of X given Y = y) という.

Proposition 1 とすると, αは可測で

が成立する.

証明 任意の に対して, となるBが存在する.このとき変数変換と,定義より

<証明終>

Proposition 2
Proposition 1.2. 可測写像を与えたもとでの条件付き期待値の性質として以下が成立する.
(1)
(2) を可積分な実確率変数,に対して
(3) ならば
(4) 可測写像を与えたもとでの条件付き期待値の単調収束定理が成立する.
(5) 可測写像を与えたもとでの条件付き期待値のFatouの補題が成立する.
(6) 可測写像を与えたもとでの条件付き期待値のルベーグ収束定理が成立する.
(7) 可測写像を与えたもとでの条件付き期待値のJensenの不等式が成立する.
(8) ,は独立とする.このとき
(9) を有界な可測関数, を実確率変数で可積分とする.このとき,

証明 Proposition1 や普通の条件付き期待値の性質の証明と同様. <証明終>