反例?
松島多様体で自明とあった補題.(前の記事参照→ Sardの定理 (続き) )
反例らしきものが出来たので.
まず多様体として というものを考える.ただし には通常の位相をいれ, は に離散位相を入れたものとし,多様体は直積位相をいれたものとする.
このとき はHausdorff空間で(Hausdorff空間の直積はHausdorff空間になる),座標変換はRからRへの恒等写像のある開集合への制限であるから,これは1次元 級多様体となる.
とすると,Aは の測度0の集合であるが, でこれは測度0でない.よってこれが反例である.
なんか穴があるかもしれないけど,第二可算公理がないとやはりなんかダメな気がする.
臨界点
写像度の話を読んでいたら臨界点の集合が閉集合であることの証明を思いついたのでメモ.
M,Nを可微分多様体としそれぞれ次元をm,nとする.可微分写像f:M→Nとする.Mの正則点全体の集合が開集合であることを示せばよい.
m < nなら任意のMの点は臨界点であるから正則点全体は空集合であるから開である.
m >= nのとき.Mの任意の正則点xに対してxを含むあるMの座標近傍 とf(x)を含む があって
ただしDfは
を(i,j)成分にもつn×m行列である.rankがnなので が正則であるとしてよい.この行列式はR^mからRへの連続関数であるから の十分小さい近傍で0でない.つまりこの近傍上で が成立している.これより正則点全体の集合をRとすれば,Rの任意の点は内点である.従ってRは開集合である.
多様体の境界
今履修している幾何学の授業の演習問題で「境界付き多様体の境界の定義が局所座標によらないことを示せ」というのがあって,位相幾何の本見たら何やら難しいことが書いてあって萎えてたんだけどもっと簡単に示せることが調べたら分かった.
境界の定義は可微分多様体Mの座標近傍系を として Mの境界∂Mは
ただし , とする.これが局所座標によらない,つまりxの座標近傍 に対して
これを待遇を用いて
を示せばよい.座標変換は全単射なので座標変換のヤコビ行列は正則.よって逆関数定理から座標変換は局所同型. の開近傍を十分小さくとれば,その座標変換による像は の開集合にうつる.よって.
そういえばMilnorの本が届いた.
Riemann測度
というのがあるらしい.具体的にはRiemann多様体M上のコンパクトな台を持つ関数全体から,Rへの線形汎関数
を定義してRieszの表現定理から多様体上にRadon測度を構成できるらしい.
この測度空間 に置いて をMの体積と呼ぶらしい.特にコンパクトで向き付可能のときは体積要素の積分と一致してる(f=1)からその拡張なのか?
Sardの定理で多様体上の測度0集合は定義するのに多様体上に測度を入れないのはなんか気持ち悪いなと思って調べたら,このRiemann測度というのが出てきた.
しかも
σコンパクトなRiemann多様体(M,g)の任意の座標近傍系をとる(局所有限でなくてよいし非加算でよい). このとき次は同値.
(i) かつ
(ii) 任意の に対して がルベーグ可測集合かつそのルベーグ測度は0
この(ii)の定義は多様体上の測度0集合の定義そのものだからσコンパクトなRiemann多様体に関してはこの測度空間で考えるとSardの定理とかの議論も少しは見やすくならないかな.位相多様体が第二可算公理を満たすこととσコンパクトであることは同値で,パラコンパクトならRiemann計量が存在するからSardの定理の仮定からRiemann測度入れられるし.
うーん幾何と解析を混ぜたような話をもっと勉強してみたいです.精進あるのみですかね・・・
気になったので
Twitterで流れてきたので
一次元(多分Rのこと)閉集合で内点をもたないルベーグ測度が正である集合は存在するか?
Baireのカテゴリー定理を使うんじゃないか?というつぶやきを見たけど一回生のレポート課題みたいだからもっと初等的に示せるのかも.
内点を持たないという条件をどう使えばいいものか・・・
追記:数学科の優秀な方が解いたので回答メモ(つぶやき引用)
[0,1]の有理数を順序づける。n番目の有理数に対しそれを中点とし、長さ2^(-n-1)の開区間Inを対応させる。A=[0,1]\setminus ∪Inとおく。可算和だから閉集合。有理数の稠密性より内点を持たない。Aの測度はΣ2^(-n-1)<1であることより正。
なるほどー.この証明によれば任意のε>0に対して[0,1]の部分集合で問題の条件を満たし,その測度が1-εよりも大きくなるものが存在するのか.
Sardの定理 (続き)
昨日の記事で(ii)の主張の証明がわからなかったので休息がてら今日は一日中ダラダラ考えてた.(一応↓は昨日の記事)
で取り敢えずそれなりの証明を考えてみた.
をMの座標近傍系, をNの座標近傍系, を可微分写像,AをMの零集合とする.
定義から がルベーグ零集合であることを言えばよい.
より
補題より はルベーグ零集合であるからルベーグ可測集合で,ルベーグ測度の正則性より任意の正数εに対して,あるR^nの開集合 があって
とできる(mはルベーグ測度).これより
ここから先は間違い
ここで少し変則的な方法(R^nの位相的性質をつかって)で零集合であることを示す.R^nはリンデレーフ空間であるから{O_β}のうち可算個の部分開被覆{O_n}が存在する.つまり
また
とできるから
の測度は任意の正数εで抑えられる.(ここがおかしい.O_βのとり方がεに依存するから抑えられない) これより(*)から
となりεは任意であったから主張が得られた.
やっと自分なりに納得する証明ができた.これでも穴があるかもしれないけど. ルベーグ測度の正則性とR^nの位相的性質がかなり効いている気が.
松島多様体だと次元が等しい時のSardの定理の証明しか載っていないので,せっかくだからと思いMilnorのTopology from the Differentiable Viewpoint (Princeton Landmarks in Mathematics) を取り寄せた.
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これでSardの定理の証明を追ってみようかと.冬休みだし.駄目だったら試験明けくらいにまた落ち着いてやってみようかな.
追記:やっぱりこの証明はおかしいことに気づいた.Mにリンデレーフ性(もしくは同値な条件である第二可算公理)が必要な気がする.Mにリンデーレフ性があれば考えるV_βは可算個で良いので零集合であることが言えるからこの証明は正しいと思う.そもそもこの証明だと「ユークリッド空間の零集合の非可算和は零集合」ということが真であることになり間違えている.
松島多様体には自明とあるので考え違いをしている気がする.