突然終わるかもしれないブログ

確率や統計の内容について記事を書く予定です.

cross variation の一意性(つづき)

cross variation の一意性 で書いた証明は間違っていることに気づきました.<X>+2A+<Y>がincreasing であることを言うときにcross variation の全変動を抑える不等式は,間違えでした.

とりあえず調べてみるとIkeda-Watanabe(Stochastic Differential Equations and Diffusion Processes)のp53に証明があったので読んでみたのですが(以下その証明),これで一意性がいえていないのではないかと思います..

証明

とし,M,Nの二次変分過程をそれぞれA,Bとする.このときXY-(A-B)はmartingaleになる.一意性はDoob-Meyer分解の一意性から従う.[証明終]

普通一意性を言うときはある上の条件を満たす過程Aがあって,実はA=<X,Y>ということを言わないといけないのではないかと思うのですが,上の証明でそれがいえているのかわからないです(というかいえていないのではないかと思います).もう少し考えてみて分かったらまた書こうと思います.

cross variation の一意性

主張

(2乗可積分マルチンゲールでかつ)とする.このとき がマルチンゲールとなり,しかも という分解を持つものはindistinguishabilityを除いて一意である.ただし

とする.


証明

をX,Yの二次変分過程とする. がマルチンゲールであるから,

もマルチンゲールである.Doob-Meyer分解の一意性(natural,increasingなので)より

実際 がincreasingであることは

より従う.

同様に

辺々引いて4で割れば

[証明終]


からしゅれの復習をしていてぱっと示せなかったので一応書き留めておくことにしました.連続だとさらに局所化のテクニックを使って連続なcross variationの一意性も示せます.この主張からcross variationの双線形性やシュワルツの不等式の類似物,cross variationの全変動を上から抑える不等式を得ることができ,Kunita-Watanabeの不等式などを得ることができるので,重要な主張だと思います.(Karatzas-Shreve参照)

確率積分における部分積分の公式

Problem3.3.12

, を連続セミマルチンゲールとし,

とする.ただし,M,Nは連続局所マルチンゲール,B,Cは適合した連続で有界変動な過程とする.また とする.このとき以下のような部分積分の公式が成立する.

[証明]
, とし, とする.このとき伊藤の公式より

同様に として伊藤の公式より

2つの式の片々引いて整理すると

を得る.[証明終]

pathが右(左)連続でadaptedならprogressively measurable

一度証明を書いておこうかと思います.

主張
を実数に値を取る,右(左)連続で -adapted な過程とする.このとき過程Xは発展的可測である.

[証明]
右連続の場合のみ示す.左連続の場合も同様. を以下のように定義する.

に各点収束する.実際 は右連続であるから任意の と任意の に対して,ある があって

nを十分大にとれば, となるので,各点収束する. は発展的可測であるから,各点収束先である も発展的可測である.



伊藤の公式は連続セミマルチンゲールの確率積分に対しての主張なので,発展的可測かどうか確かめる必要があるのですが,上の主張から問題ありませんでした.class DLの記事のときにもこの主張を確認したのですが,まだ馴染んでない気がしています.pathの片側連続性があれば,可測性には弱い仮定(adaptedだけ)仮定するだけで,発展的可測がでてくるのがしっくりきていない気がしています.

マルコフ過程で発展的可測であるが,強マルコフ過程でない例

からしゅれにも参照の本が挙げられていたけれど,ぐぐったら出てきたので紹介を.

The Strong Markov Property and Martingale Problems

この関数fを見つけてきたのはすごいと思いました.

ベクトル束に同伴する主ファイバー束の位相

をn次元可微分多様体 をr次元ベクトル束 ( はファイバー)とし,

とする.また を局所座標近傍系, に対し とする. を局所的切断とする.つまり 局所標構場とするとき, ( は標準基底)とする.ここで

とすると,全単射となる.

Proposition1
の部分集合 が開集合であることを,

と定義する.開集合全体を とすると, は開集合系の公理を満たす.

証明
任意のαに対して

より とすると,

より とすると

よって .[証明終]

Propositon2
この位相で は連続である.

証明
Mの任意の開集合Vと任意のαに対して

.したがって連続.[証明終]

Propositon3
この位相で は同相である.

証明
位相の定義より明らか.[証明終]

Propositon4
ハウスドルフ空間である.

証明
の相異なる二点 をとる. のときは多様体ハウスドルフ空間であることから,開集合で分離される.のときは が同相で,ハウスドルフ空間であるから開集合で分離される.[証明終]

Propositon5
のとき,

微分可能である.

証明
ベクトル束の変換関数が微分可能であることから従う.[証明終]


以上のPropositionより,ベクトル束Eに同伴するファイバー束Pは 多様体である.

可測写像が与えられたもとでの条件付き期待値

Definition

を確率空間,を可測空間とする. を可測写像 を実確率変数とし可積分とする.このとき


とすると, は上の符号付き測度となる.また (像測度) とすると, は に関して絶対連続となる.
よってRadon-Nykodim 導関数が存在し,それを と表す.これをY = y が与えられれたときのX の
条件付き期待値(conditional expectation of X given Y = y) という.

Proposition 1 とすると, αは可測で

が成立する.

証明 任意の に対して, となるBが存在する.このとき変数変換と,定義より

<証明終>

Proposition 2
Proposition 1.2. 可測写像を与えたもとでの条件付き期待値の性質として以下が成立する.
(1)
(2) を可積分な実確率変数,に対して
(3) ならば
(4) 可測写像を与えたもとでの条件付き期待値の単調収束定理が成立する.
(5) 可測写像を与えたもとでの条件付き期待値のFatouの補題が成立する.
(6) 可測写像を与えたもとでの条件付き期待値のルベーグ収束定理が成立する.
(7) 可測写像を与えたもとでの条件付き期待値のJensenの不等式が成立する.
(8) ,は独立とする.このとき
(9) を有界な可測関数, を実確率変数で可積分とする.このとき,

証明 Proposition1 や普通の条件付き期待値の性質の証明と同様. <証明終>