ゼータ分布に従う独立な確率変数が互いに素になる確率[D.Williams]
主張
X,Yは独立にゼータ分布に従うものとする.つまり
とする.このとき
(gcdは最大公約数)とすると,
となる.[D.Williams: Probability with martingales, p226]
証明
であるため.これより
となる.
次に つまりX,Yが互いに疎になる確率を計算する. , とすれば 達は独立である.実際
よりわかる.従って
\begin{eqnarray*}
P(H=1)
&=&P\bigg(\bigcap_{p:{\rm prime}}(E_p\cap F_p)^c\bigg)\\
&=&\prod_{p:{\rm prime}} P((E_p\cap F_p)^c)\\
&=&\prod_{p:{\rm prime}} (1-1/p^{2s})\\
&=&\frac{1}{\zeta(2s)}
\end{eqnarray*}
Xがpの倍数であるときのXの分布は,またゼータ分布になる:
nが素数でないときも
と定義すれば,条件付き期待値の性質から
となって示された.(包除原理を使って計算する方が正確だと思われます)[証明終]
ちなみにgcd(X,Y)の可測性は
から分かります.また結局互いに素な確率は
ということもわかり,面白いと思いました.
Hilbert--Schmidt作用素はコンパクト作用素
主張
を可分なヒルベルト空間とし, を から へのHilbert-Schmidt作用素とする.このとき はコンパクト作用素である.
証明
事実1
をコンパクト作用素とし,
であるならば, はコンパクトである(コンパクト作用素の全体はバナッハ空間なので).
事実2
有界線形作用素の値域が有限次元空間であればコンパクトである(有限次元と局所コンパクトは同値).
この二つの事実を用います.
を の内積とし, を完全正規直交系とする.有界線形作用素 を
と定義する.事実2より はコンパクト. が に強収束することを示せば,事実1より はコンパクトとなり,主張が示されたことになる.
となる. はHilbert-Schmidt作用素であるから,
Hui-Hsiung Kuoの Gaussian Measures in Banach Spacesという本を読み始めました.上の主張はこの本のExerciseになっています.抽象ウィナー空間が分かるようになりたいです.
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Problem5.4.4
Problem5.4.4
連続で適合している確率過程 がd次元のブラウン運動であることの必要十分条件は
が任意の に対して連続な局所マルチンゲールになることである.ただし
とする.
証明
がd次元のブラウン運動であれば, が連続な局所マルチンゲールであることは伊藤の公式から明らか(cf. Karatzas and Shreve, Proposition5.4.2, p312).逆に任意の に対して が連続な局所マルチンゲールになるとする.とくに について考えれば, は連続な適合した局所マルチンゲールとなる.さらに であることが,Karatzas and Shreve, Proposition5.4.2から分かる.よってLevy's characterization of Brownian motion よりこれらがd次元のブラウン運動であることがわかる.[証明終]
Problem5.3.13
Problem5.3.13
はd×d行列で,任意の(t,x)に対して正則であるとする.また は一様に有界であり, の最小固有値は(t,x)によらずに下から正の値で抑えられているとする.さらに
は初期分布 の弱解を持つとする.このとき確率微分方程式
[証明]
まず が(t,x)によらずに一様に上から抑えられることを示す. の固有ベクトルを正規直交基底として選び とし ,対応する固有値を とする.ただしλは(t,x)によらない正の定数である.このとき,
となるから
これより
これよりNovikovの条件からGirsanovの定理を用いて
は の下でブラウン運動となる.よって
(※)の等号は -a.s.で成立します.考えている確率空間が違いますが成立します(Karatzas and Shreve Problem3.5.6)
Exercise3.5.11(Robins&Siegmund(1973))
Exercise3.5.11
ν>0, c>1 に対して次のような -stopping time を定義する.
このとき
[証明]
より
あとは であることを示せば十分である.なぜならばこれが成立すればWaldの恒等式から
となり,(1)の両辺の期待値をとって整理すれば
を得るからである.実際計算してみると
となり,証明が終わる.[証明終]
最後のR_cの可積分性を示すのに苦労しました.
Exercise3.5.10
Exercise3.5.10
Wをブラウン運動,, を前の記事と同じ確率測度とする. を での期待値とすれば
が成立する.
[証明]
あとは Exercise2.8.4 と同じように考えれば
λについての二次方程式 の解は であり, に注意してbの正負で場合分けしてλを選べば結論を得る.[証明終]
Problem3.5.7
Problem3.5.7
を一次元のブラウン運動とする.ただしフィルとレーションはWを可測にする最小のσ加法族とする.Tを -stopping time でかつ, を満たすものとする.このときWaldの恒等式
が成立することと,
として定義したものを に一意的に拡張した測度である(Karatzas and Shreve, Corollary 3.5.2参照).
は上の条件を満たす.(Novikov conditionの証明に用いられる(Proposition 3.5.12))
[証明]
Optional Sampling Theoremから
よって単調収束定理から
特に, なら なので で のもとで, はブラウン運動になる(Girsanovの定理)ので
[証明終]