突然終わるかもしれないブログ

確率や統計の内容について記事を書く予定です.

Exercise(3.12),Chapter2(Revuz, Yor)続き

Exercise(3.12),Chapter2(Revuz, Yor)

[続き]
(2) として とおいて(1)から

つまり

となる. として結論を得る.

(3) とすれば, より となる.(1)の結果から

つまり

となる.

(4) がマルチンゲールであることはすぐにわかる. であることを示す.非負のマルチンゲールであるから, が存在する.Fatouの補題から

となり である.よって(1)より となり,結論を得る.[証明終]




Revuz and YorのContinuous Martingales and Brownian Motionという本の問題でした.この問題を使って3次元以上のベッセル過程で0が非再帰的であることが示せるそうなので考えています.今後もこの本の問題を解くかわかりませんが,この本の問題のカテゴリはRevuzAndYorにしておきます.

Exercise(3.12),Chapter2(Revuz, Yor)

Exercise(3.12),Chapter2(Revuz, Yor)
Mを正の値を取る連続マルチンゲールとし, とする.また とおく.
 
(1) に対して となることを示せ.

(2) より一般に が 正の値を取る 可測な確率変数であるとき であることを示せ.

(3) B を を出発する1次元のブラウン運動であるとする. とするとき, の分布を求めよ.

(4) B を標準ブラウン運動であるとする. を用いて がパラメータ の指数分布に従うことを示せ.

[証明]
(1) とすると,これはstopping timeでありMはマルチンゲールであるから, もマルチンゲールである.よって となる.ここで

であるから条件付き期待値のルベーグの収束定理より

となる.一方

となり,

となる.2つ目の等式は であることと条件付き期待値のルベーグの収束定理から従う.以上より

よって

となる.ここで場合分けをする.まず のときは より

よって .それ以外のときは

より となる.以上あわせて

[(1)の証明終][次の記事に続きます]

一様可積分かつ局所連続マルチンゲールであるがマルチンゲールでない例2(M.Yor)

一様可積分かつ局所連続マルチンゲールであるがマルチンゲールでない例(M.Yor)

上の記事で一様可積分かつ局所連続マルチンゲールであるがマルチンゲールでない例を調べたのですが,からしゅれでは次のExerciseでまたこれと同じ種類の例を挙げているので,証明します.


Exercise3.3.37
Rを0を出発する2次元のベッセル過程とする. が局所連続マルチンゲールで

が成立することを示せ.また はマルチンゲールでないことも示せ.(一様可積分であることもわかる.)

[証明]
まず局所連続マルチンゲールであることを示す.伊藤の公式から

これより は局所連続マルチンゲールである.ただしBは1次元の標準ブラウン運動である.

を示す.α=0のときは明らか.0<α<2のときは

ただしn次元球の体積を用いて積分を評価した(一様可積分かつ局所連続マルチンゲールであるがマルチンゲールでない例(M.Yor)参照).α<0のときは, として

これより

となる.次に一様可積分であることを示す.そのために任意の に対してL^p有界であることを示す.つまり

を示す.

よって

となる.これより一様可積分である.最後にマルチンゲールでないことを背理法を用いて示す.マルチンゲールであれば期待値が一定であるから

ただし,途中で を用いて評価した.tは任意の1以上の実数であったから,

ところが, より

よって矛盾である.これより, はマルチンゲールでない.

exponential supermartingale

Problem3.2.28
をstandard Brownian motion とし をmeasurable,adaptedで

を満たす確率過程とする.つまり確率積分

は定義できるものとする.このとき

と定義する. は優マルチンゲールであることを示せ.また が単過程のときマルチンゲールであることを示せ.

[証明]
まず が単過程のときマルチンゲールであることを示す. が単過程のとき に対して

が成り立つことをまず示す. が単過程なので

と表せる.ただし とした.また単過程の定義よりある定数Mが存在して

であり, 可測である.前の記事の補題より

これと条件付き期待値のtower propertyから

が成立する.よって

これより が単過程のときマルチンゲールである. が単過程でないときは伊藤の公式より

よって は非負値局所連続マルチンゲールである.一般に非負値局所連続マルチンゲールは優マルチンゲールであるから(KaratzasAndShreve, Problem1.5.19),証明が終わる.[証明終]



Xが単過程でないときは,Xを単過程でうまく近似して(KaratzasAndShreve, Problem3.2.27)Fatouの補題を使うことでも示せますが,準備が大変なので伊藤の公式をつかった証明で済ませました.また省略しましたが条件付き期待値のところで可測なものを外に出していますが,可積分性をチェックしなければいけません.それは の有界性から従います.

[追記] の有界性から議論するのではなく先に優マルチンゲールであることを言って

を言うのが早い気がしました.

モーメント母関数の条件付き期待値

次の記事でKaratzasAndShreveのProblem3.2.28の証明をしたいと思いますが,そこで使う補題を示しておこうと思います.

主張
を確率空間とし, の部分σ加法族とする. また をほとんど確実に有界な 可測関数とし, を平均 0 分散 t の正規分布に従う と独立な確率変数とする.このとき

が成立する.つまり で条件付けると を定数と見なした のモーメント母関数になっている.

[証明]
まず が単関数のときを示す.

とする.ただし, とする.また

とおく.任意の に対して

よって

となる.次に がほとんど確実に有界な一般の確率変数のときに示す.このとき単関数の列

となるものが存在する.ここで

とすると,Vは可測である.さらに

であり,

である.よって条件付き期待値の優収束定理より

を得る.[証明終]


もっと簡単に示せそうな気もするんですが,とりあえず上のように愚直に示しました.あと細かい議論は抜きで条件付き期待値と可算和を交換しようとすると

途中で

であることを使いました.これでも期待値と和の交換の正当性が言えればいいと思います.

一様可積分かつ局所連続マルチンゲールであるがマルチンゲールでない例(M.Yor)

Exercise3.3.36
を0を出発するd(≧3)次元ベッセル過程とする.

(i) 局所マルチンゲールであり,
(ii) に対して (従って一様可積分)を満たし,
(iii) マルチンゲールでない

ことを示せ.

[証明]
(i)Rが有界な範囲で止めて伊藤の公式を用いると有界変動の項が消えるので局所連続マルチンゲールである.

(ii) Mは非負であるからフビニの定理より

ここで

となる.ただし半径rのd次元球の体積は であることを用いた.これより

ただし であることを用いた.従って

を得る.

(iii) 背理法による.Mがマルチンゲールであるとする.(ii)より一様可積分であるから が存在して,かつ はマルチンゲールであり, が成立する.ところがd≧3のとき (KaratzasAndShreve,Problem3.3.24) なので .従って

ところが は非負でかつ より .これは矛盾である.[証明終]

Levy's Characterization の反例っぽいもの(反例ではない)

Exercise3.3.17
を3次元の0を出発するブラウン運動とし,

とおく.このとき,どの二つのペア も2次元のブラウン運動になるが, は3次元のブラウン運動にならないことを示せ.またこれが,Levy's Characterization Theoremに矛盾しない理由を説明せよ.つまり, は局所連続マルチンゲールであるが, は3次元のブラウン運動にならないのは矛盾でないのはなぜか.

[証明]
第1段
ブラウン運動であることを示す.そのために次の補題を用いる.(R.Durrett「Probability Theory and Examples」,4th-Edition,p302,303)
補題
ブラウン運動であることと,以下の3条件を満たすことは同値である.

(i) はガウス過程である.
(ii)
(iii) は確率1で連続.

この補題よりブラウン運動である.実際(i)を満たすことは に対して

上の式変形はXの値で分割して考えると得られる.また(ii)を満たすことは より従う.また(iii)は明らか.よってこの補題よりブラウン運動である.

第2段
が2次元のブラウン運動であることを示す. が2次元のブラウン運動であることは明らか. が2次元のブラウン運動であることを示す.そのためには が独立であることを示せばよい.それには任意のボレル集合A_1,A_2に対して

が成立することを言えばよいが,それは上と同様にXの値で場合分けすれば示せる.同様にして も2次元のブラウン運動である.

第3段
が3次元のブラウン運動でないことを示す.背理法による.ブラウン運動であると仮定する.このとき

・・・(1)

よって

一方 は0を出発するブラウン運動であるから, は独立.したがって

・・・(2)

よって(1),(2)式より

ブラウン運動であるとすると,

よって矛盾である.

第4段
Levy's Characterization Theoremに矛盾しない理由はフィルトレーションにある.つまり各過程が適合しているフィルトレーションに違いがあるので矛盾しない.[証明終]



長くなったので第4段についてはまた次の記事で書こうと思います.あとKaratzas&ShreveのBrownian Motion and Stochastic Calculusの本の問題は別のカテゴリ[KaratzasAndShreve]にすることにしました.