突然終わるかもしれないブログ

確率や統計の内容について記事を書く予定です.

Exercise5.2.17(Ito-Watanabe(1978))

Exercise5.2.17
Wを標準ブラウン運動とする.以下の確率微分方程式

は以下のような非可算無限個の強解が存在することを示せ.

ただし, とする.

[証明]
がargument化したfiltration(からしゅれp285)に適合するのは明らか.また初期条件は

であり,さらに

より

またはstopping timeでほとんど確実に有界である. であり, は連続マルチンゲールであるから伊藤の公式より

ここで

であるから

となる.実際 とすれば

より

また

であり,上と同じ議論から

さらに國田-渡辺の不等式から

以上より

[証明終]



強解の一意性のうちdtの方の係数が強解の一意性の十分条件を満たさないと反例があるという話題でした.

Problem3.3.23

Problem3.3.23
をd(≧3)次元のr(>0)を出発するベッセル過程とする. とするとき,

となることを示せ.つまりYはベータ分布に従う.

[証明]
伊藤の公式より, は局所連続マルチンゲールである.従ってあるstopping timeの列 がマルチンゲールとなり, となるものが存在する. とすると,これらはstopping timeで, となる.

で, , より条件付き期待値のルベーグの収束定理より,

さらに として

整理して

を得る.[証明終]

d(≧3)次元ベッセル過程はt→∞でほとんど確実に無限大に発散する

Problem3.3.24
をr(≧0)を出発するd(≧3)次元ベッセル過程とする.このとき

が成立することを示せ.

証明
伊藤の公式から は非負値局所連続マルチンゲールである.よって連続な優マルチンゲールであるから が存在する.重複対数の法則より .よって となる.これより となるから, [証明終]

Exercise(3.12),Chapter2(Revuz, Yor)続き

Exercise(3.12),Chapter2(Revuz, Yor)

[続き]
(2) として とおいて(1)から

つまり

となる. として結論を得る.

(3) とすれば, より となる.(1)の結果から

つまり

となる.

(4) がマルチンゲールであることはすぐにわかる. であることを示す.非負のマルチンゲールであるから, が存在する.Fatouの補題から

となり である.よって(1)より となり,結論を得る.[証明終]




Revuz and YorのContinuous Martingales and Brownian Motionという本の問題でした.この問題を使って3次元以上のベッセル過程で0が非再帰的であることが示せるそうなので考えています.今後もこの本の問題を解くかわかりませんが,この本の問題のカテゴリはRevuzAndYorにしておきます.

Exercise(3.12),Chapter2(Revuz, Yor)

Exercise(3.12),Chapter2(Revuz, Yor)
Mを正の値を取る連続マルチンゲールとし, とする.また とおく.
 
(1) に対して となることを示せ.

(2) より一般に が 正の値を取る 可測な確率変数であるとき であることを示せ.

(3) B を を出発する1次元のブラウン運動であるとする. とするとき, の分布を求めよ.

(4) B を標準ブラウン運動であるとする. を用いて がパラメータ の指数分布に従うことを示せ.

[証明]
(1) とすると,これはstopping timeでありMはマルチンゲールであるから, もマルチンゲールである.よって となる.ここで

であるから条件付き期待値のルベーグの収束定理より

となる.一方

となり,

となる.2つ目の等式は であることと条件付き期待値のルベーグの収束定理から従う.以上より

よって

となる.ここで場合分けをする.まず のときは より

よって .それ以外のときは

より となる.以上あわせて

[(1)の証明終][次の記事に続きます]

一様可積分かつ局所連続マルチンゲールであるがマルチンゲールでない例2(M.Yor)

一様可積分かつ局所連続マルチンゲールであるがマルチンゲールでない例(M.Yor)

上の記事で一様可積分かつ局所連続マルチンゲールであるがマルチンゲールでない例を調べたのですが,からしゅれでは次のExerciseでまたこれと同じ種類の例を挙げているので,証明します.


Exercise3.3.37
Rを0を出発する2次元のベッセル過程とする. が局所連続マルチンゲールで

が成立することを示せ.また はマルチンゲールでないことも示せ.(一様可積分であることもわかる.)

[証明]
まず局所連続マルチンゲールであることを示す.伊藤の公式から

これより は局所連続マルチンゲールである.ただしBは1次元の標準ブラウン運動である.

を示す.α=0のときは明らか.0<α<2のときは

ただしn次元球の体積を用いて積分を評価した(一様可積分かつ局所連続マルチンゲールであるがマルチンゲールでない例(M.Yor)参照).α<0のときは, として

これより

となる.次に一様可積分であることを示す.そのために任意の に対してL^p有界であることを示す.つまり

を示す.

よって

となる.これより一様可積分である.最後にマルチンゲールでないことを背理法を用いて示す.マルチンゲールであれば期待値が一定であるから

ただし,途中で を用いて評価した.tは任意の1以上の実数であったから,

ところが, より

よって矛盾である.これより, はマルチンゲールでない.

exponential supermartingale

Problem3.2.28
をstandard Brownian motion とし をmeasurable,adaptedで

を満たす確率過程とする.つまり確率積分

は定義できるものとする.このとき

と定義する. は優マルチンゲールであることを示せ.また が単過程のときマルチンゲールであることを示せ.

[証明]
まず が単過程のときマルチンゲールであることを示す. が単過程のとき に対して

が成り立つことをまず示す. が単過程なので

と表せる.ただし とした.また単過程の定義よりある定数Mが存在して

であり, 可測である.前の記事の補題より

これと条件付き期待値のtower propertyから

が成立する.よって

これより が単過程のときマルチンゲールである. が単過程でないときは伊藤の公式より

よって は非負値局所連続マルチンゲールである.一般に非負値局所連続マルチンゲールは優マルチンゲールであるから(KaratzasAndShreve, Problem1.5.19),証明が終わる.[証明終]



Xが単過程でないときは,Xを単過程でうまく近似して(KaratzasAndShreve, Problem3.2.27)Fatouの補題を使うことでも示せますが,準備が大変なので伊藤の公式をつかった証明で済ませました.また省略しましたが条件付き期待値のところで可測なものを外に出していますが,可積分性をチェックしなければいけません.それは の有界性から従います.

[追記] の有界性から議論するのではなく先に優マルチンゲールであることを言って

を言うのが早い気がしました.